普段詞・腐男子の冒険 言葉をめぐる定説不定説 - ぶどううり・くすこ

〈腐男子〉という言葉がウェブ上を中心に囁かれる様になって幾久しい時が流れました。当初一般の傍観者であった筈の筆者もいつの間にか発言者の末席に座っており、今だに自分の立ち位置に対して戸惑っております。
その戸惑いの要因の1つとして思うのは、〈腐男子〉が肩書きとして用いられる場面に遭遇する事です。
それは目くじらを立てて考える様な事なのか、と思われる向きもあるでしょう。実際筆者も交流あるいは研究に関わりだした当初はそうそう違和感を抱かぬまま諸事に対峙していました。
しかし、ある程度言葉が普及してくるとなんとなく齟齬が見えてくるのです。語源を遡及し探求し、現状と照合した上で再考してみると。
以上を鑑みて以下の稿では筆者の独自調査も交えた〈腐男子〉そしてほぼ同義語の〈腐兄〉の遍歴を追い、言葉の変遷、そして当事者達の意識の有り様・コミュニケーションの状態について一考を加えてみたいと試みます。自らも少なからず関わった、腐男子研究の動きに対する再考も含めて。
なお本文中の時事記録の幾許かは、手前味噌ながら拙著同人誌及びブログ『腐男子腐兄事象年表』にても記述しております。お手許で参照していただけましたら幸いです。

〈腐男子〉・〈腐兄〉と言う言葉は発生当初からコミュニケーション抜きに語ることが出来ない語として存在した、とウェブ上に残されたデータから読み取る事が出来ます。
そもそも両語の成立を語るには02年8月にまで遡る必要があります。場所は2ちゃんねる801板(BBSPINK)・『オトコのヤオイ好きの憂鬱』と銘打たれたスレッドです。
まずそこで生まれたのは〈腐兄〉という言葉でした(4番レス・22日記述)。これは実際自虐も含めた符牒的な自称であったのだろうと拝察できます。何故ならば先行して存在した〈腐女子〉と言う語に合わせた洒落として提唱されたからです。婦女子→腐女子である様に父兄→腐兄である、と。ただし定着するまでは諸手を上げて歓迎されたと言う訳でもなかった様です。ボーイズラブ・やおいに対する感情は趣味の志向・属性であって性嗜好(志向)属性と混同して男性同性愛者と言う決めつけに短絡されたくないと言う煩悶は往時から表面化していた模様ですね。
そう言う話題が展開されていた所へ投下されたのが〈腐男子〉と言う語です。本当に唐突に、あたかも古くからこの言葉が存在していたと言わんばかりに(69番レス・29日記述)。実際投下された後、明確な出典が提示される事はなく、なんとなく受け止められ定着したという感じの経緯となりました。