腐女子がみる同人コミュニケーションいまむかし - あやゐかをり

《はじめに》

本稿は、ペーパーやpixivなどのコミュニケーションツールを中心にとりあげ、00年代前半を境に変化し始めた同人活動を通じたコミュニケーションについて確認することを目的としている(コミケなどの同人イベントやオフ会などについてはまた別稿として考えていくつもりである)。
一腐女子の視点からではあるが、十数年間腐女子として同人活動に携わってきたうえで見てきたものをここに綴ることができれば幸いである。今回、本稿を綴るにあたり、何名かの知人や友人からも経験談をいくつか聞くことができた。そちらについても紹介しながら筆をすすめていきたい。

《「ペーパー」から「ホームページ」へ》

まずは、オフラインが中心だった時代のコミュニケーションツールの例として「ペーパー」をとりあげる。ペーパーとは、自らのサークルの情報や近況などを載せたフリーペーパーのようなもので、当時、大手のサークルならば1万枚以上刷っている場合もあったほどである。
インターネットが普及していなかった頃のコミュニケーション方法といえば、(直接話すという方法以外は)ほとんどが文通、もしくはFAX交換であった。雑誌などの媒体に掲載された多くの募集の中から、自らと趣味の合う「同志」を見つけ、そこに掲載されている住所へ自分で手紙を送り、返事が来るのを待つ。そして、相手から返事がきてはじめて文通が開始される。今となっては、印刷物に自宅の住所や氏名を掲載するなんて信じられないかもしれないが、当時は今よりもはるかに手紙のやりとりが頻繁であり、それらに住所を載せることに抵抗のない人が多かったのである。
ペーパーには、主に自分の好きなジャンルについてのトークや、次回イベントについてのお知らせ、発行物の通販情報などを記すことが通常であったが、同人作家が文通相手を見つけるツールとしても活用されていた。現在では、インターネットを通じて様々な人と関わることが可能であるが、オフラインが中心だった時代はそうではない。
腐女子のコミュニケーションがオンライン上へと移行し始めたころ、同人作家は各々で自らのホームページを立ち上げ、そこに作品を置き、サークル情報を載せ、日記や掲示板を設置し始めるが、それ以前は、ペーパーがその役割を担っていた。ホームページのコンテンツを、ペーパーの項目にあてはめてみるとわかりやすい。近況部分が日記、インフォメーション部分がオフラインページ、とそれぞれ対応しているのがわかるだろう。ペーパーには、サークルによって各々がタイトルを付けており、その点においても、ホームページと同様であった。